「もしかして…末吉に聞いたのか?俺の母親のこと」
目が合って 司さんはじっと私を見た
「……」
「…そうか」
なにも言えずエプロンの裾を握った。
司さんは 書類を片付け、(机の隅に置いただけ)頬杖をついた。
「…司さん」
「末吉は君になら話していいと思ったから話したんだ。…その点では俺はちゃんと理解してるから大丈夫だ。ああ見えて信頼した人間には柔軟なんだ、普段は貝みたいにお堅い人間だけど…」
司さんは ポケットに手を入れ立ち上がった
「…紅々…」
「はい…」
「…母は捜さなくていい。」
「…、」
「もうこんな年だ、一人で生きていけるし。今更母親が出てきても面倒くさくなるだけだ」
-面倒くさい
「ですが…」
「…多分会っても何の感情も湧かないはずだしね、多分憎しみしか湧かない…自分を置いて、27年も生きてきて何の事情も分からないままなんだ」

