風が冷たい
エプロンがはためくのを私はそっと押さえた
この話は私が聞いちゃいけない話なんじゃないか…
でも…
手をぎゅっと握る
-司さまを…
末吉さんの言葉がよみがえる
なにか理由があるんだ
末吉さんもきっとそれ…を知っている
だから…
「……僕は本来なら生まれるべき人間ではなかったですからね。嫌われて当然だ」
「……」
司さんの声がささやきみたいに風の音と重なる
「あなただって僕を認められないはずだ、なぜなら僕は貴方の子供じゃなく…、」
「司!!」
風が止んだ…
司さんが何を言ったか分からなかった
-ボクハアナタノコドモジャナク…
「……やめなさい、今更」
久光様は小さな声で言った
「僕の父は貴方ではなく蒼井司郎。僕は貴方の息子ではなくあなたの兄弟…。」
(-司さんが……蒼井司郎さまの…子供!?)
「こないだ議事堂で事件があった時に言われましたよ。“蒼井総理の亡霊”を出せと……」

