「……」




「優しさなんかない。頭の中では常に何か理由を探してる。政治であれ…何であれ。」




司さま…。
私は首を軽くふった


違う 司さまは優しい。






「……そう思うのは一ノ瀬さんが優しいからだ」



カツカツと後ろから近付く音がした



すぐ後ろに司さまがいるのが分かった





「……司さま。」



「…なに」





ドキドキする。

「桜井さんは…」






「彼女には好意すらない…。俺は苦手なんだ、彼女みたいな人間は。“俺”ではなく、“蒼井”の名に寄ってきてるだけだ。価値がないと思ったらすぐ離れていくよ…」




蒼井の名…
価値がなかったら…




「……それはわかりません。わたしには…」




「理解しないでいい…。理解する価値すらない。」

「…司様は汚くなどないです。確かに騙されたのは腹がたちましたけど、本当に汚い人はこうして謝りになんて来て下さいません」





ゆっくり振り返る

いつも通りの彼がいる



「あなたは悪い人じゃありません。」