「橘……深い、雪?なんて読むの?」 大学の授業で配られた、提出用プリントの右端に用意された指名欄を見て、隣に座っていた女が声をかけてきた。 「ミユキ」 「へえ。女の子みたいな名前だねえ」 女はおおげさに目と口を大きく開けた。続いた言葉は、ねえ、メアド、教えてよ、だ。 しつこいくらい甘ったるい猫撫で声に 程よく肉のついた白く柔らかそうな体。 全部が、あの人と正反対だ。