そうやって、俺は、彼女が買う膨大な量の食べ物を、彼女が咀嚼して吐き出すことを、黙認した。 ピッ、ピッ、ピッ と、機械音を鳴らして、彼女の行為を許していく。 お弁当温めますか。 冷たいものと、袋分けますか。 二千八百十円になります。 ありがとうございました。 お釣りを渡すとき、触れた手の冷たさに、背筋が凍った。 骨張った指の感触を、今でも、覚えている。 あの、冷たさは そうだ、雪のように。