ただのお客さんだ。 「お弁当温めますか?」 「お願いします」 抑揚のない、冷めた声。 お札を置いた彼女の指には、吐きダコがあった。長袖から見える手首には包帯がぐるぐると、巻き付けられていた。 だからって、どうすることができるだろう。 「ありがとうございました」 と、俺は彼女の背中を見送る。