「さぁ、わかんないよ。
でも、わかる事もある。海は空さんが好き。で、逃げてる」



「私は…――」



好きかはまだ、自分でもわからない。

恋なんて、した事ないし。

私、空兄の顔を見るの、怖いよ。

怖い――――……。

ーーバンッ



「海―――ッ!!」



私は遥ん家を飛び出してしまった。

携帯も財布も、忘れて。

行く宛なんて、お金のない私にはない。

家に帰るにも、電車に乗れないから、1時間は掛かる。

熱帯夜にそれは嫌だ。

私は陸兄の友達が住むマンションが、ここから近い事を思い出し、そこに足を向けた。