「お譲ちゃん?」と少し怒気を含んだ声が彼女の上から降ってきた。

またびくっとなり、恐る恐る声のした方に顔を向けた、というより男は女の目の前にいるのだが。思った以上に男との身長差があり、軽く頭2つ分は離れていて、男に見下ろされている形で、少女は首が痛くなるような角度で男を見上げて固まった。

「何か言うことはないのかな?」
男は笑顔ながら怒気を含んでいた。

「あ、ありがとう・・ございます。」
そんな男の威圧感に少女は怯えながらお礼を言いながら頭を下げた。
しかし、すぐに少女はそわそわ落ち着きない雰囲気になった。

一応、お礼を言われたことで気が晴れたのか、男は普通の態度で
「この生き物はお譲ちゃんの?」

「・・・」

男が質問すると少女は答えず俯く。

「ところで、お譲ちゃんはどこに住んでいるんだい?森に1人じゃ危ないよ?」

「・・・」

「魔女の棲む森を知っているかい?」

少女はずっと俯いたままだったが、そう質問するとびくっとなり、ザハルを抱きかかえて北の森の方に逃げて行った。

何か怪しい。
あの女、村の方ではなく北の森の方に逃げていった。
何か知ってそうだ。

そうして、男は少ない荷物を詰め、少女の後を追い北の森に入っていった。