俺は死んでしまったのか…まだまだこれからしたい事がたくさんあったのに。
「納得頂けたようですね」
車掌は満足げに頷いた。
「で、ここはどこなんだ?」
「ここはあなたが向こうの世界を見守る場所です」
「へ?」
佑二は顔を上げる。「この列車はあなたが生きていたずっと上、宇宙を走っています。ここからあなたは向こうの世界をいつでも見ることができます。先程の様にその人のことを念じると、この列車の窓がその人の今の姿を映してくれます」
佑二は真っ先に亜紀のことを思った。
「じゃあここからいつでもその人のことを見ることが出来るのか?」
「はい」
ここで車掌は少し間を空けた。
「ただ一度だけ、あなた自身が向こうの世界の大切な人に会うことが出来ます」
「え?会えるのか?」
佑二の表情が明るくなる。亜紀に会いたい。ただ会いたい。
「会えると言っても、その人が見ている夢の中だけです」
「夢の中?」
「はい。夢の中なのであなたからしか一方的に話せません。夢枕に立つと向こうでは言うようですが、まさにそのような感じです。こちらはとても強い霊力がいるので一度しか出来ません。更にこれをすると…」
車掌はまた間を空ける。
「何だよ?」
「その後強制的にまた生まれ変わることになります。この場合、記憶などはもちろん全て消えます。」
「記憶が消える…」
「全てです。では大切な人に何か伝えたくなった時、私をお呼びください」
車掌は軽く頭を下げると隣の車両に消えていった。