私は中央に座った。
幹部は私を見ていた。
目の前に料理やお酒があるのに手を付けていない。
これから話すことに対して反対する態度の表れだろう。
でも、そんなことはどうでもよかった。
いずれはこうなる運命だったんだ。
私は幹部の顔を一人一人確認して話し始めた。


「皆さま方、今回は御集り頂き、誠にありがとうございます。
早春の候、皆さまにおかれましてはますますのご発展のこととお慶び申し上げます。
さて、今回御集りして頂いたのは五代目総長のことでございます。
現在も捜索中ではございますが、私どもも手掛かりがつかめず、恐縮ながら、現在総長代理の私を次の次期総長に就任することを報告いたしたく、御集りをお願いしました。
つきましては、『W』六代目総長として今後ともよろしくお願い申し上げます」



私は一礼をした。
ここからが本番だ。


「ちょっと待て」


私は声が聞こえた方を見た。
幹部の一人が立ちあがっていた。


「恐れ入りますが、何かご不満でもおありでしょうか」

「あるに決まっているだろう。
なぜ総長の娘が我々の総長になるのだ」

「それでは次期総長は誰が宜しいのですか」


男はニヤリと笑った。


「俺が継ごう」


「そうですか。
それでは仕方がありません。
私たちの総長の条件は『誰よりも強い』ことが条件です。
私を倒したら次期総長の座を御譲りしましょう」


男は私に襲いかかってきた。
男は右腕を振りかざし殴ろうとした。
女だろうと関係ないと思っているのだろう。
私は避けた。
私は男との距離をとった。
男は真顔で話し始めた。


「お前の親父さんは確かに最強だ。
全身を『強化』する能力で攻撃を寄せ付けない。
それなのになぜ『キャンセラー』を付けていたのか分かるか」

「わかりません」

「俺が怖いからだ」


男は自信満々に話している。