現場が近づくほど人が増えて行った。
僕は人を退けながら現場へ向かった。
周囲の人は楽しんでいた。
まるでお祭りのように………
何が楽しいんだ。
『R』の起こした事件でも『R』の目指した目標は僕達が活動した『C』と同じなんだ。


彼らは必死なんだ。
それなのに何もしないで世界に流されている人が楽しむな。
僕は感情を抑えながら前に進んでいった。


ビルの入り口近くまで来たがここからどうすればいいのだろう。
ビルに侵入するにも周囲には伊藤のこともあり、ビルの周りに警備員がいた。
僕は『能力手帳』を出した。
図書館で借りた『戦闘能力辞典』から使えそうな能力をメモした手帳だ。
僕は『透明』の能力の理論を読み、『選択』した。
レベルが低くても使えるのが気にいったのでメモしたが役に立った。


僕は警備員を素通りした。
誰も気づいていないだろう。
僕はビルに入る前に後ろを振り返った。
人が沢山いた。


これが僕達の国、『ヘブン』
朝は楽園………
夜は闇………
二つの顔を持った国の国民か


こいつらを正しい方向に変えようとしたのか
………伊藤は
この世界は腐ってる………


今まで人のこと、国民のこと、国のこと、世界のことを何も考えなかった僕が多くの国民を見て、なぜそんなことを思ったのか不思議だった。


だが、そんなことよりも今は伊藤を助けることが大事だ。
僕は前を向き、ビルの中へと入った。