でも、伊藤はそのことに気づいてくれた。
それに辻本も伊藤に相談されて知っていた。
能力だけしか目に入らないクラスの皆と思っていたのに僕を見てくれる人がいた。


僕は嬉しかった。
『C』に活動してから仲間になったのではない。
僕はもともと仲間だったんだ。
伊藤が望む世界を変えることなんで僕にとってはどうでもいいことだ。
僕は伊藤からもらった大切な仲間を守りたい。




―――現在
僕はナナミを見た。
ナナミはTVを見ていた。
僕はナナミの手を離した。
そして、ベンチから立ち上がり、背を向けたまま「助けたい」と言った。


「やめて………、お願い………」


僕は振り返った。
ナナミも立ちあがっていた。


「ごめん、でも伊藤のことが気になるんだ。
僕は世界のことなんてどうだっていい。
でも伊藤は僕の親友なんだ。
仲間なんだ。
僕の力が世界を滅ぼす力であっても、僕は仲間のために力を使いたいんだ。
護るために………」

「ミコト君、あなたは親友の伊藤君を守れれば、世界が滅んでもいいの………」

「滅ぼさないさ………
僕はそんなことしない」


僕はナナミに抱きついた。


「『お前はいずれ『才能』に目覚めるだろう。
『選択』次第で人を幸せにも、不幸にもさせてしまう。
使い方を間違えるな』
死んだお父さんが言ってたんだ。
僕の能力は世界を滅ぼす力かもしれない。
でも、それは僕の『選択』次第なんだ。
僕は伊藤を助けても………
戦争になっても世界を滅ぼしたりなんかしない」

「ミコト君………」

「帰ろう。僕達の町へ」

「うん」