―――想い出
僕が親を亡くしたのは小学校に入る前だった。
両親とどこかへ向かう最中に事故で会い、森下総合病院に搬送された。
目覚めて最初に知ったことは両親が死んだことだった。
僕はこれからどうすればいいのだろうと思った。
僕は親戚に引き取られたが先生は僕が心配だったのか、病院から一時間以上かけて家に来てくれた。


僕は嬉しかった。
小学四年生のとき、森下先生に病院の近くにマンションがあってそこの大家さんと一緒に住まないかと誘われた。
僕は承諾した。
そして、家を引っ越し、学校も転校した。
不便のない生活だった。
大家さんは優しかった。
でも学校を転校したことで知ったことは友達がいないことだった。
僕はいつも教室でも授業でも放課後でも一人だった。


そんな中、初めて話しかけてくれたのが伊藤だった。
それから遊ぶ時も帰る時もいつも一緒だった。
中学、高校と同じクラスになり、『C』の活動を共にした仲間だ。
高校になった時、大家さんが一人暮らしに興味がないかと話してくれたので僕は承諾した。


一人の方が楽だと思ったからだ。高校に入学して隣の席に辻本がいた。
僕は話す気がなかったが、気がつけば話をしていた。
僕の席から離れていたがナナミがいた。なぜか気になってしまい、僕は伊藤に頼んで声を掛けた。


二年に進級して山本を伊藤に紹介された。
伊藤は色々な人とつながりがあった。
僕はなかった。
作る気がなかったからだ。


いつからだろう。
小学生までは伊藤と二人で遊んでいたのに、気がつけば遠い存在になってしまった。
それにほかの友達とも一緒に遊んでいた。
でも中学生になり、能力開発の授業から僕は変わってしまったのかもしれない。
自分の持つ『才能』の優れているものが優秀とされる場所で『自己再生』能力者の僕が皆より優れているわけがない。


それに皆に知られれば、練習と言って虐められるかもしれない。
僕は能力を隠し、一度も使用しなかった。
伊藤は他の友達と能力開発を楽しんでいた。
僕はクラスで孤立するようになった。
話す相手がいないんじゃない。
ただ話したくないだけだった。