「だがそれだけではない」


突然、空間に圧力がかかった。


「このグローブは使用者には効果がかからないんだ」

「なんだ、これは」


伊藤が驚いていた。
僕も………


「お前たちは能力系統の中でどれが優れていると思う」


重たい圧力の中、伊藤が男に一言言った。


「そんなこと知るか………」

「『肉体強化系』だ」


そう言い放つと僕達の前から消えた。


「ぐぁーーー」


伊藤が吹き飛ばされた。後ろを振り向くと男がいた。


「『W』の組長をやる人間には『絶対的な力』が必要だ。
わかるな」

「………」

「神山ミコト。
お前は世界第一位の記録を持つ能力値85が誰だか知っているか」

「………」

「私だ」


男が触れてもいないのにも関わらず気合いだけで僕は吹き飛ばされた。


「ミコト………」

「うるさいやつだ」


伊藤を持ちあげ片手で首を絞め始めた。
僕はとっさに『具現化系』の『物体』能力でメスを具現化させ、男に投げた。
男にもう片方の手に付けた『キャンセラー』で弾いた。
殺される。
僕は死を覚悟した。


「なんだ………これは」

「僕の能力だ」

「こんな小さいものを具現化する力がお前の能力か」


僕は頷いた。
腕輪を外さないとそれが限界だ………
嘘をついてはいない。


「興ざめだ」


伊藤を地面に落とし、男は部屋を出ようとした。


「待ってくれ、なんで『W』が俺たちの国に来たんだ」


伊藤が男に質問したが返事はなかった。


「また会おう。
『C』の総長、そして神山ミコト」


男は出て行った。
部屋には傷を負った伊藤と安らかに眠っているナナミと僕だけがいた。