なんで僕の名前を知っているのだろう。
伊藤は動揺していた。
僕は言われたとおりに姿を現した。


「お前が『神山ミコト』か………」

「………はい」

「こんな小僧が………
まあいい」

「伊藤とか言ったな、お前はこいつをここに連れてくるためのエサだ。
だが、連れてきてくれたんだ。
あとは好きにしろ」

「どうして、世界と戦っている『W』がミコトのことを知っているんだ」

「………」


男は答える気がないらしい。


「ナナミを返して下さい」


僕は男に言った。


「返すさ………
だがその前に君と話がしたい」


僕は伊藤の方を見た。
伊藤は頷いた。


「あなたは誰ですか………」


男と話をするのか別にいいがこの男は誰だろう。


「私は『W』の総長をやっている者だ」


なんでここに世界と戦っている『W』のボスがいるんだよ。
僕は伊藤を見た。
何の反応もない。
知っているのだろうか。
でも、『W』のボスは存在自体が知られていない謎の多い男なのになんでその姿・形がわからないとされる男が目の前にいるんだよ。


「我々の組織に来ないか、神山ミコト」

「………」

「ふざけるな、ミコトは俺たちの仲間だ」


伊藤が『電撃』能力で男に雷を放った。
横から見たが命中していた。
助かったと思った。
だが、男は無傷だった。


「何度やっても同じことだ。
私のグローブはどんな効果も無効にする『キャンセラー』が入っているんだよ。
君がいくら攻撃しても私には効果が無いよ」

「伊藤………、『キャンセラー』って何」

「『キャンセラー』っていうのは『能力無効化装置』のことだ。
ミコトも知っているだろ。
自分の能力を制御できない無能者が付けている装置のこと。
その装置の名前が『キャンセラー』っていうんだ。
だが、あの男は今までとは違う使い方をしている。
ミコトも見ただろ。
能力を無効にしたのを。
どうやら、能力者の能力を無効にするグローブらしい」

「………」


僕の腕輪も『キャンセラー』が入っているんだ………