「おはよ。」

十字路に立っていた学生が手をあげた。

「おー。」


軽く手を挙げて返事をすれば学生、シリクスが笑った。

「オッサンみたいだよ」


「失礼な」


ケラケラ笑い合いながら学校へ向かう。

昨日はルシアと仲良くなれなかったから、今日こそは仲良くなろうと思う。


「よし、やるぞー」


小さく上げた拳にシリクスが目を細めた。


「昔からデュランは小さいよね。あげかた。」


「うるさいな」


そんな細かい事まで言わなくてもいいよ。


少し照れ臭くなって俯いた。

俯いたまま早足で歩いていれば、

「、デュラン止まれ!」


シリクスの焦った声と、

「きゃっ」


女の子の悲鳴と


「うわっ」


小さな衝撃。


そのまま後ろに倒れそうになったのを頑張ってその場に留まる。

小さく息を吐き出して前を向けば、


「だ、大丈夫!?ごめん!」

ルシアが尻餅をついていた。


慌てて手を差し出して頭を下げる。

ルシアに怪我なんてさせたら…!


悔いる。自分が許せない。


てか、殺られる。


自分に殺られる。


カタカタと震える手をふんわりと小さな手が握った。


「悠李ちゃん…だよね?私は怪我なんてしてないから、大丈夫だよ?」


私を覗き込むようにして、
ね?
と微笑んだルシアを、


「…ごめんっ!」


我慢出来ずに抱きしめた。


自然と涙が溢れ出る。

やっぱり、
時代が違っても、
容姿が違っても、
記憶が違っても


ルシアはルシアなんだと
再確認出来たから。