「遅刻だよ?薮知さん」



その背後から来た人物は、あたしの後ろから両手を回して、未だに口元においたままさわやかすぎる音で普通の台詞をはきやがった。




もちろんのことパンを飲み込んだ後も口元に置かれる細くてでかい手によってあたしの口は開かず、
反論すらできない。



「ふ、ふんむー!!」





あたしは半分涙目になる自分を鏡越しで見つめ、ついでにあたしの口を冷酷にふさぐそいつの顔も拝む。





鏡に映ったそいつは、まぶしいぐらいの笑顔で、さわやかとおだやかとキレイを統合したような顔。