キスしたくなる唇に。



あたしはいまだ食べ終わらないパンのパンカスを床に落としつつ、考える気がないことをひたすら考えようと考えた。



しかしその考え事は、背後に忍び寄るわずかな気配にあたしが気づいたことで見事に飛び散った。






誰? と振り向く前にデカくて細い手があたしの顔に回る。

そして――――





「ふむんっんんん!?」





遅かった。と思うのはすでに遅く、

背後から来た人物によって食いかけのパンはあたしの口の中へ押し込まれ、多分歯茎から血が出た。




無理に固いパンなんて食うもんじゃないな、って思った。