「知ってる」 そんなあたしの言葉に、いつの間にか顔を上げた先輩と目が合った。 先輩の顔はすでに無表情をなくし、獲物を追い詰めたような笑顔。 ああ、これが先輩の本当の顔、なんだなあ…。 多分、出会ってからはじめてみた。 「………君は俺の事が好きなんでしょ?」 先輩は最後にそう言った後、あたしが握っていた自分の手首を解き、逆にあたしの手に絡めた。 それからぐい、と少し強引に、 あたしを自分と近づける。 正直、驚いてる。