「これ、何ですか?」

「制服の裏ボタン」

赤い小さな七宝焼きで、
金色のサソリの絵が描いてある。

「いいですけど……」

よく分からないまま、
その四角い小さなボタンを
白いハンカチに包む。

「願かけなんだ。
無事に帰ってこられるように」

「どこかへ行くんですか?」

「いや、明日大きな集会があるから」

集会?
私がきょとんとしていると、
矢沢先輩が両手で
ハンドルを握るマネをした。

「バイク?
矢沢先輩、暴走族なんですか?」

「うん」

と、矢沢先輩は笑いながら言った。