「泣くほどいやだった? ごめんな」

いつの間にか
涙が頬を伝っていた。
だけど、その涙は
いやだったからじゃない。

「あー、
これでやっとあきらめがついた。
俺も新しい恋に生きよう」

大きく背伸びをしながら春樹が言う。
その顔は清々しく笑っている。

「ほんとごめんってば。
もう泣かないで」

春樹がちょっと困ったように、
ティッシュで私の涙をふく。

深いところに閉じ込めておいた
私の春樹への想いは
まだ全然小さくなっていなくて、
それどころか
どんどん大きく膨らんで。

こんなに春樹のことが大好きなのに、
矢沢先輩のことも本気で好きだなんて。

私って最低な女だ。