放課後になって荷物をまとめていたら、
八千代に背中をつつかれた。

「もしかして、アレは千里を待っとるのか?」

教室の後ドアの所に
矢沢先輩が立っている。
クラスの人たちが、
先輩を避けて前のドアから出ていく。

慌てて矢沢先輩の所に行く。

「よう」

昨日、急に逃げ出した事は、
怒っていないようだった。
矢沢先輩は優しく微笑んでいる。

「今日は部活に行くの?」

「あ、はい。行こうと思っています」

「俺も今から人と会う約束があるから、
五時に駅前のマックで待ち合わせしよう」

矢沢先輩と話していたら、
春樹が近づいてきて、

「先に暗室に行ってるぞ」

と言って、後ろのドアから出て行った。

「何、あいつ」

矢沢先輩が、
ちょっと怖い顔になる。

「いとこなんです。部活も同じで」

「へえ、いとこねえ……」

廊下を歩く春樹の後ろ姿を、
矢沢先輩は睨み付けるように見ていた。