「―――夕方、井川と会議室の周りを話しながら歩いてたとき、詩穂…近くにいたろう?」 唇を離したかと思うと、昴さんは不意にそう言った。 私は、その言葉にはっとして昴さんを見つめ返す。 …気づかれてたの!? 「…家に着いたら弁解するから。だから、迎えに来た」 そう言うと、不安そうにしている私の頬にチュッとキスを落とす。 ―――昴さんはそれきりなにも話さず、車は無言のまま昴さんのマンションに向かう。 私はその間、前を向いて運転している昴さんの横顔をじっと見ていた。