高野課長は肩で息をしたままこちらをゆっくり振り返った。 「…ここでしばらく待ってろ」 そう言い残すと、また早足で部屋を出ていく。 ―――ぽつんと部屋に一人残されると、さっきまでの緊張感が解けてようやく身体の力が抜けていく。 助かった………。 安心すると同時に、あんな姿を課長に見られたことがショックだった。 軽蔑された? 呆れられた? 課長が戻ってくるまでの数十分間、私は不安でたまらなかった。