コンコン…
はっ…
ノックの音で遥は
我に返った。
「遥ぁ…入るわよぉ」
お母さんだ…
いや、現実にはお母さんになってくれた人…だ…
「体調は大丈夫なの?…お粥、できたけど、食べる?」
心配そうに遥の顔を覗き込む。
遥はやり切れない思いだった。
「食べる気しないからいい。」
「そう……
じゃ、お腹すいたら降りて来てね。」
そう言って義母は部屋を出て行った。
遥は頭を押さえた。
涙が溢れ出す。
…こんなふうに言いたいんじゃないっ!
ここまで本当の子供のように育ててくれた、お母さん…お父さん…
私の辛い過去を思い出させないように、
嘘をついてくれた事は、とても感謝してる。
…それなのに、
なぜだろう…
この裏切られたような感情は…
すべてが嘘だった…
偽りだった…
あの思い出もっ…
どの思い出もっ…
あの写真達もっ…
よく考えれば、
みんなで写っている写真なんか、
一枚だってなかった…