ジョーカーは状況を受け入れない様子だ。

無理もない話だ。この戦いのために情報操作をしたのだ。

能力など勉学と同じだ。

やろうと思えば、練習などいくらでもできる。

学校はやり方を教える場所であり、練習場所でもある。

俺はこれまでの人生で何度も学校に通ったのだ。

学ばなくても、もう理解している。




俺が距離を取ったことで、ジョーカーの火炎放射は届かない。

俺かジョーカーが接近しない限り、ジョーカーの能力は炎の球しかない。

だが、その攻撃も見切っている。

俺はある程度の余裕が出来た。

次に接近した時が最後だ。

この戦いを一瞬で終わらせる。




「やめだ」


ジョーカーはそう言うと身体の『炎』を今まで以上に激しくさせた。

それは次第に大きくなっていく。

俺はナイフで鋭い風を起こし、ジョーカーを攻撃した。

だが、距離があり威力は無い。

その風はジョーカーに向かって行ったが、ジョーカーは避けない。

ジョーカーに斬り傷を負わせた。

ジョーカーを包む『炎』は徐々に集束していく。

その光景を見て、胸騒ぎを感じた。

まるで粒子を最大限に蓄えているようだ。


「お前が誰であろうと、敵には変わりない」


ジョーカーは両手でお腹を押さえるように構えた。


「燃えろ―――」


両手を勢いよく広げると同時に『炎』がジョーカーを中心に広がっていく。

その『炎』は周辺のビルや五十嵐の事務所が飲みこんだ。