俺の能力は身体の一部が標的に当たるときの勢いを増幅させる。

身体の一部とは手に持った物も認識される。

威力は半減するが、ナイフの刃部分で作った空気の斬撃を飛ばすことが出来る。

一種の『カマイタチ』のようなものだ。




俺は左手に能力を宿し、風を起こした。

風は炎の壁を消した。

『炎』が消えると、目の前には左手に通信機を持ち、右手で傷口を抑えるジョーカーの姿が現れた。


「ウルフ。その情報は本当に正しいのか」


ジョーカーは殺気を俺に向けながら、ウルフから情報を聞いたらしい。


「わかった。お前はそのまま待機だ。この糞野郎は俺が殺す」


通信機を仕舞った。

ジョーカーは粒子を両手に集めながら、話し始めた。


「お前は本当に『相澤ヒサノリ』か」


俺は答えなかった。

その代わり、ナイフを3度振った。

ジョーカーは鈍足ながらも走り、避けた。

先程の攻撃で『炎』で防ぐことは不可能だと知ったからだろう。


「高校卒業後、五十嵐の秘書となり、現在もその関係は変わらない」


ジョーカーは左手を俺に向け、火炎放射のように『炎』を放った。

俺は右に避けた。


「能力は『衝撃』能力。
だが、無能者だ」


ジョーカーは右手も使い、左手同様に能力を使った。

次第に左右の逃げ場所が無くなっていく。

俺は左右に動くのを止め、ジョーカーから距離を取った。

攻撃範囲はもう調査済みだ。

30m程離れると、ジョーカーの『炎』は届かなくなった。

ジョーカーは『炎』を放つのを止め、俺の方を見た。

「学校では戦闘のための能力訓練は行わない。
またお前は学校卒業後に特殊訓練を行った経歴はない。
だが、なんだ。
お前は………
明らかに戦闘訓練をしている。
それにお前は無能者ではない」