五十嵐がやりたいことは『能力開発』である。

それは俺と出会った13年前と変わらない。

この『能力開発』とは能力を制御できない無能者に対するものだ。

この国『ヘブン』も含む世界各国では、無能者に関する研究はされていない。

それは研究資金がないことや能力研究が進んでいないためである。

五十嵐は国から資金を援助して、無能者を助けようとしていた。

無能者は『ヘブン』国内でも1万人いるとされている。

能力を持つのに制御ができないため、生活を制限されている者や『能力病』に発症する可能性が高い。

この問題は一般的に以前から知られているが、どの国も対応していない。

五十嵐の話では研究者に資金を与え、『ヘブン』国内にいる無能者を助けるだけでなく、世界中の無能者を助けようとしていた。


「ふん―――………考えておこう」


五十嵐は答えると、再び新聞を読み始めた。

俺はこれ以上言うことはないと判断して、眠りに入った。