「正直、もっと早く出来ないのか。
俺の知っている奴はこのソフトの解析を1年で解析したぞ」


俺は広川にプレッシャーを掛けた。


「それは何度も聞いています………」

「なら、なぜできない」


俺は更にプレッシャーを掛けた。


「以前も話したと思いますが、その方は我々プログラマーの憧れである『ファントム』だと思うんです」

「また、その話か」

「はい、国際指名手配で逮捕された人です。きっとその人だと思います」

「確か、『PC言語解析』能力者か」

「そうです」

「そういう能力者の知り合いはいないのか」

「いません」

「仲介料は資金の10倍支払うから」

「申し訳ありませんが、いないんです」


俺はため息を吐いた。

俺も広川に『ファントム』のことを聞いて調べたことがある。

それは世界で初めてその能力を持つだけで『国際犯罪者』となるものだ。

これが承認されたのは世界に対する危険性とその能力を開花した人が歴史上、一人しかいないからだ。

たぶん、この世界では『イレギュラー』な存在なのだろう。


「まぁ、仕方がない。そのデータをくれ」


俺は持ってきたメモリーを広川に渡した。


「その前に………」


広川は聞きづらそうに言った。


「わかっている。報酬だろう」


俺は小切手を出し、金額を記入した。


「ほら」


俺は広川に渡した。


「ありがとうございます」


広川に報酬を渡すのは2ヵ月ぶりだった。

だが、俺は契約通り、1ヵ月分とプラスαの上乗せ金額しか渡さない。

当然のことだ。

結果が出なければ仕事をしたとは言えない。

広川は俺のメモリーを受け取り、動画を移した。


「それじゃあ、次も良い報告が聞けるように頑張れよ」


俺は立ち上がり、H社を出ようとした。


「はい」


広川の元気な声が聞こえた。