俺達は扉の前に立った。

向かう順番はどうでもいい。

ただ、最後に向かうのは俺だと計画の段階で決まっていた。

俺が現実世界へ行った時、管理室の作業も終わる。

つまり、俺が現実世界に行けば、仮想世界から現実世界への扉が閉ざされることになる。

有志の方々が次々に扉の中に入っていく。

残ったのは俺とミコト、アキト、山本にジュリーの5人だけだ。


「………で、誰が初めに行く」


誰も立候補しない。


「そうかぃ。それじゃあ、俺から行かせてもらう」

「私もいくわ」


山本に続いてジュリーも一緒に行くらしい。

この二人は何度も現実世界へ向かっているため、管理設定で『身体』を固定している。

そのため、自動で魂が決められた『身体』に入ることになる。

ジュリーは山本の腕を組み、扉の入り口に入ろうとした。


「ジュリー………」


男の大声が聞こえた。

無意識に声のするほうを見た。

4名の男女がそこにはいた。


「………リュウ」


ジュリーは小さな声で言った。

リュウは走ってこちらに向かってくる。

他の奴らもこちらに近づいてくる。


「ジュリー、俺達に一声掛けろよ」


「………これは『G』ではなく、私で決めたことよ。
仲間だからって邪魔しないで」

「俺達は家族じゃないか」


リュウは涙を流しながら言った。

俺は彼らの中心にいる男を見た。


「久しぶりだな」


この男とは、いずれ会うと思っていた。

まさか最後に会うとは思いもしなかったが………


「久しぶり」


男は頭を掻きながら近づいてくる。


「9年ぶりだな、アイド」