俺が寝ていると、五十嵐が俺の肩を叩いた。


「ヒサ君、起きなさい。着いたよ」


俺は重い瞼を開けて、周囲を見た。

車は停まっている。

隣には五十嵐がいる。


「………はい」


俺は頬をビンタして強制的に目を覚まさせた。


「明日の予定をくれ」


予定通りに本日の仕事を終えた。

五十嵐は明日のスケジュールを渡すように指示してきた。


「はい、先生」


俺は鞄から書類を出して五十嵐に渡した。


「ありがとう」


五十嵐は書類を見ていた。


「ふん―――………明日は早川さんとか」


五十嵐は嫌そうな顔をしていた。


「そう言わないでください。
先生が描きたい国を造るには『力』が必要です。
あの方のおかげで私達は資金を頂き、選挙に勝つことが出来るんです」

「だが、私はこの男が好かん」

「先生。言葉を慎んでください。
政治家は言葉一つで全ての功績を無にします」

「そうだね。………気を付ける」


五十嵐はスケジュールを確認してから、鞄に書類を閉まった。

俺は車の扉を開け、先に外に出てから、扉を開けたまま、五十嵐が降りるのを待った。

五十嵐が降りると、運転手は車を駐車場に運んだ。

俺は五十嵐の後ろに付き、周囲を確認しながら歩いた。

特に変わったことはなかった。