「その日から、彼は学校を休んだ。
一週間後にはまた登校してきたけどね。
僕は気になって彼に聞いたんだ。
『ゲームはクリアできた』ってね。
彼は『できた』って言ったんだ」

「まあ、時間を掛ければできるだろ。
なんだって」

「彼は『他のゲームも貸してくれ』って言うから、貸したんだ。
貸す条件として『学校は休まないこと』を約束してね。
彼は約束を守った」


たぶん、西条は対戦ゲームができる友達を作りたいのに、引きこもりになると困るわけだろう。

だから、そんな約束をしたに違いない。

バカバカしいな。


「高校3年になって友人が僕に提案したんだ。
一緒に『ゲームを作らないか』って。
僕は喜んで賛成した。
そして、卒業後に僕と友人でゲーム会社『E社』を起業した」

「お前、どう思う」


俺は相棒に聞いてみた。


「良い話だと思います………」

「そうか」


相棒の答えを反論したかった。

どうでもいい話だと思えたからだ。


「そこからが大変だったよ。
独学でゲームを作って売った。
儲けたお金でゲームを作る繰り返しだ。
次第に従業員も増えた。
僕は代表取締役として、ゲーム制作に携われないほど忙しくなった。
だから、経営は僕がやり、ゲームの製作管理を友人に任せた」

「それで………」

「ある時、友人が会社を辞めたいと言いだした。
僕は説得したけど………
辞めてしまったよ。
でも、それから数年後に会社を訪問してきてね。
ゲームを作ったから、売ってほしいって」

「それが『Infinite Information』か」

「そうだよ。僕はそのゲームにバグがないか部下に調べさせた。
ゲーム会社としてはバグがあると色々と面倒でね。
利益を下げると困るんだ」

「で………バグはあったのか」


俺は分かっていたが聞いてみた。


「なかったよ。完璧な作品だと報告を聞いた。
友人に発売の許可を出して、製造会社にゲームのデータを送ろうとしたとき、友人が自分で持って行くって言うから、そうさせた」

「騙されたってことか」