「友人………」

「そう。
会社を立ち上げた時の友人が造ったゲームなんだ」


俺は本当の話かどうか、相棒に尋ねた。


「お前はそのこと知ってたか」

「いいえ………初耳です」


相棒も知らないらしい。


「その友人が持ってきたゲームを発売したってわけか」

「発売はしたけど、あれは僕の知るゲームじゃない」

「意味が分からないな。
初めから話せ」

「初めから………
どこから話せばいい」

「その友人についてからだ」


西条は目を閉じた。

友人との出会いを思い出しているのだろう。

しばらくして、話し始めた。


「あれは、僕が高校2年次の出来事だ。
その当時は勉強だとか、才能だとかに興味がなく、時間さえあればゲームをしていた。
よく先生にも怒られたよ」


俺は友人の事を話せと言ったのに、自分の思い出を話し始めた。

すぐに止めようとしたが、もう少し聞いてみることにした。


「成績も中の下でね。
まあ、クラスの皆から見ればダメな奴だと思われていたよ。
でも、僕は気にしなかった。
だって、もう一人。
クラスで落ちこぼれがいたからね」

「それが友人か」

「そう。その友人はいつも本を読んでいたんだ。
何が楽しいかは分からないけど、僕としては同類がいて嬉しい限りだった」

「くだらないな」


聞いていて腹が立ってきた。


「ある時、僕は彼と友達になりたいと思ったんだ。
僕には友達がいなくてね。
対戦ゲームをするのはいつもコンピューターだ。
だから、彼に話しかけた」

「それが始まりか」


俺は西条のこめかみに向けたままの銃の照準を胴体に向けた。


「彼は不思議な奴でね。
すぐに興味を示したんだ。
そこで、僕の持っているゲームをいくつか貸したんだ」

「典型的な出会いだな」


俺はある意味で西条を馬鹿にしていた。