「私は潰すべきだと考えます。
今はまだ小さい組織かもしれない。
しかし、いずれは大きな組織になる可能性が考えられる。
火種が大きくなる前に消すべきだ」


別の男が手を挙げた。


「私は様子を見るべきだと考える。
隠密部隊の彼が話したように、『W』を潰したとき、裏切り者が逃げる可能性がある。
そうなると、我々は彼らの手掛かりを失うことに繋がる」


会議室では次から次へと意見が飛んでいた。

『W』を潰すべきか、様子を見るべきか。

そして、意見を述べて行く中で一人の男が手を挙げた。


「どうぞ」


中川は男に発言権を与えた。


「正直、私は『W』という組織が今一つわからない。
潰すべきなのか、潰さないべきなのか。
そんなことを話し合う前に、『W』という組織を知るべきではないか。
『W』という組織の規模は………
人数は………
活動範囲は………
我々の組織にどう影響するのか………
まずは辻本ユウジの秘書を捕獲することを提案します」


男は言い終わると椅子に座った。


「この提案について………」


中川が参加者の意見を聞こうとしたとき、議長が手を挙げた。


「議長………」


中川は議長の方を見て、話すのを止めた。

議長は立ち上がり、辺りを見渡した。


「多大なる意見、大いに感謝する。
先程の提案は不可だ。
私はこの議会の意見次第で辻本ユウジの秘書を捕獲できるように、部下に指示を出した。
だが、彼女は昨夜自殺した」


俺は動揺した。

辻本は秘書を『殺すな』と言った。

だが、秘書自ら自殺した。