数多くの者達が手を挙げる中で、中川は一人を指名した。

指名された男は立ち上がり、俺達に質問をしてきた。


「なぜ、秘書を逃がしたんだ。
辻本ユウジ同様に組織の裏切り者かもしれない」


男が言い終わると、俺は答えた。


「我々が秘書を殺害しなかったのには4点あります。
1つ、任務以上の仕事をしない。
1つ、仮にその場で殺害しても我々同様に甦る可能性がある。
1つ、秘書を捕獲したところで『G』の情報を外部に流出する恐れがある。
1つ、秘書を殺害すると、『W』は我々の見えないところで次の手を模索する可能性がある」


男は反論もなく、椅子に座った。


「他に質問は」


中川は参加者に再び聞いた。

一人の男が手を挙げた。


「君の話では、任務以上の行動は不利益だと考えているね。
だが、それは時と場合によってだと考えてみろ。
もし、この場に捕獲した秘書がいたら、我々は最小限のリスクで問題を解決できたと考えられるのだが」


俺は再び答えた。


「我々は『G』議長隠密部隊だ。
任務に対してそれ以上もそれ以下もしない」

「それなら、なぜ辻本ユウジが組織の裏切り者だと知ったんだ」

「………」


俺は答えなかった。


「君達はただ議長の評価を上げようとしたんだろう。
それなら、秘書を捕獲するのもできたはずだ」

「………どういうことだ」


俺は男の方を見た。


「ようするに、君達は辻本ユウジの忠告を素直に受け入れたと言っているんだ」

「………」

「以上、質問を終わります」


男は席に座った。


「他に質問は」


中川が聞いたが、誰も手を挙げなかった。


「それでは、本題に入ります。
今後、『W』をどう対処するべきでしょうか。
組織を裏切った者が誰なのかはわかりません。
しかし、実在しているのは事実です。
辻本ユウジは組織に忠告しました。
『W』を潰すべきでないと………
我々は『W』を潰すべきなのか。
それとも様子を見るべきなのかを現時点で審議する必要があります」


誰かが手を挙げた。