「違う………
僕の持つ能力には必ず意味があるんだ。
なぜ、僕なのか。
それが運命だったのかもしれない………
それでも選ばれたのだから、その力で皆の力になれれば………」


ミコトが言うと、アイドは笑みを浮かべた。
そして、手を差し伸ばした。


「その力を持つ人間が君でよかった」


ミコトはアイドの右手を見つめた後、握手に応じた。


「君ではなく、他の誰かだったら、人々は違う世界を今頃見ただろう」


それはこれから、起こることを予言しているのだろうか。
俺はふと、そんなことを思った。


「でも、それはもう無くなった。
俺は君の役割を引き継ぐ。
君が皆の『光』であったように、俺も『光』になる。
やり方が違っても、思われ方が違っても、俺が『光』であろうとする限り、世界は『光』を見続ける」


アイドはミコトがこの世界から居なくなっても、心配する必要はないと言いたいのだろう。
これからは自分が、その役割を引き継ぐと………


「ありがとう………」


ミコトは自分の役割をアイドに任せられると思えたのだろう。
ミコトの存在は大きかった。
その力に依存はしていないが、どこかで世界から離れていいのかを迷っていのかもしれない。
『超越者』の能力があれば、仮想世界に残る人々に何かを与えることが出来るのかもしれないと。
アイドは握手を止め、アキトを見つめた。
何も言わずに、アキトの頬を撫でた。


「待っているから。
君が来るのを………」


アイドは小声で言った。
今のアキトには分からないだろう。
だが、何年後、何十年後にはその意味が分かるはずだ。
アイドはアキトが『Contact』という役割でこの世界に再び現れると信じている。
俺はその約束を果たさなければならない。
それが俺とアイドの『利害の一致』なのだから。
アイドがアキトの頬を撫で終わると、ミコトから離れた。


「さぁ、行け。そして、新たな世界を見てこい」


アイドはミコトに言った。