相棒も真剣だ。
下手をすれば、旅をする中でアイドの殺戮した光景を見ることになるからだ。
アイドの気分次第で良い方にも、悪い方にもなる。


「さぁ、話は済んだでしょ。
そろそろ帰ろう」


アイドは玄関から出て行った。
相棒はアイドの背中を見つめている。
ふと、俺もアイドの背中を見つめると、唐突に言われた。


「これも金本が用意したシナリオか」


金本は『W』と『Infinite Information』、『超越者』を用意した。その中で出てくる『魔王』は、それらの副産物だ。


「ああ」


俺は嘘をついた。
だが、こういうときは考えておいたことにすればいい。
余計な不安要素を相棒に与えるよりはある程度の余裕を持たせることが大事だ。


「そうか」


相棒はアイドとは逆方向に背を向けた。
階段を登り、自分の住む部屋に変えるのだろう。


「ありがとう」


俺も相棒に背を向け、玄関を出た。外は日差しが強い。
そして、暑い。
ジメジメした気温で遠くの景色がボケけて見える。


「それじゃあ、戻ろうか」


アイドが話すと、俺達の周りに粒子が集まった。
子供達はサッカーを止め、俺達を見ている。次第に身体が浮き始める。
身体を浮いている姿を確認した瞬間、動き始めた。
今度は行きよりもスピードがある。
帰り道を知っているためだ。

これだと早く着きそうだ。
行きは相棒に会えることで、様々な思い出が頭に流れた。
その時の想いも………
その時の経験も………
だが、今は違う。
今はただ世界を見ていた。
この世界で生きた時間は長かった。
この世界が仮想世界とは思えないほどだ。
この世界を作った技術力は壮大なものだ。