「………お前はどうしたいんだ」


俺はアイドに聞いた。


「俺はこの世界に残るさ。
人よりも能力を多く持つのは何かと便利だからね」


アイドは掻くのを止めて話した。
それは誰だって同じだろう。
人よりも優れた能力を持って生まれたのだ。
他者の憧れる存在。
人の上に立つことができる力。
手放そうとする方がどうかしていると言える。


「やはり、お前は殺した方がいいかもしれない」


相棒は鋭い目つきで言った。
右手で拳を作り、強く握った。
相棒も多才能力者の強さは知っている。
それでも敵意を見せることで、アイドに意志を伝えないのだろう。


「落ち着け。
こいつにも何かをしてもらう」

「何を………」


相棒は俺に視線を向けた。
先程とは代わり、雰囲気が変わっていた。
俺は考えた。
正直、何も思いついていない。
そもそも、俺はアイドに会うとは思っていなかったからだ。
アイドがあと5分、遅れてくれば、会うはずがなかった。
なぜ、現れたのか。
今思えば、あの時はそんなことしか考えられなかった。


「………極秘だ」

「極秘だと………
それは俺にも言えない事か」


俺が言うと、相棒は聞き返してきた。面倒なこととなった。
俺は考えた。
アイドの能力をどうするべきかを………
今まで経験した出来事とアイドの能力から、俺が出せる答えを見つけようとした。
こういう時、ナナミの存在が必要だ。
最適な手段を導き出してくれるはずだが………
今はいない。
俺はナナミに頼り過ぎていたのかもしれない。
とっさの判断が出来なくなっているのも事実だ。

考えろ………
ミコトのような能力を持ち、世界を脅かす存在。
俺は視線を逸らした。
道路では子供達がサッカーをしながら遊んでいる。
山本のように意志さえあれば、どこにでも移動できる行動力。
俺は一つの答えを見つけた。


「こいつは『魔王』になる素質がある」