しばらくすると、扉が開いた。


「はい」


扉を開けたのは女性だった。
多分、相棒の母親に当たる人だろう。
歳は30前半程か。
綺麗な服を着て、化粧をしているので、生活には問題ないと思われる。
薬指に指輪をしているのを確認した。
家族構成は良好らしい。


「こちらに息子さんはいらっしゃいますか。
以前、一緒に遊んだもので………
そのとき、忘れて行った物を返しに来ました」


俺は持っていたハンカチを見せながら女性に言った。


「そうですか。
わざわざ、ありがとうございます。
ちょっと待ってて下さい。
マー君………」


そう言うと女性は扉を閉めた。
アイドは俺の様子を見て、笑みを浮かべた。


「嘘がうまいね」

「慣れているだけだ」


とっさの思いつきで嘘をついたが、どうやら疑われなかったようだ。




―――1分後
扉が開いた。出てきたのは女性と子供だった。


「ほら、『ありがとうございます』っていうのよ」


母親は子供に言った。


「ありがとうございます。
お母さん。
ちょっと叔父さんと遊びに行って来てもいい」


子供は状況を理解したようだ。


「いいわよ。
でも、すぐに帰ってくるのよ」

「わかった」


そう言うと、子供は俺達の方に来た。


「行こう。叔父さん」


子供は走りながら、階段を降りて行った。


「元気な御子さんですね」

「主人に似たもので………」


俺は一礼して、子供を追いかけた。