「俺は『C』計画が始まる前に疑問があった。
なぜ、ミコトのような『超越者』が必要なのか。
『現実世界への戻り方』を知る者は言った。
『『超越者』は『W』の『剣』となり、『勇者』の『盾』となる』と………
それは嘘ではなかった。
実際、ミコトの『Capacity』は想像以上だった。
でも、制御ができたから良かったが、もしミコトを制御出来なかったら………
世界はどうなっていただろうか。
だが、本当は人々を現実世界へ戻すための『鍵』を意味していた」

「『鍵』ね。
今の俺なら開けることが出来るの」

「それはわからない。
お前らは薬を使い、『超越者』になれるらしいが、それがどういう存在を意味しているのか。
今の俺にはよく理解できないからな」


俺達はアパートの階段を登り始めた。
鉄かアルミの金属類で作られているのだろう。
階段を登る度に足音が辺りに響いた。


「俺は『世界への出方』を知るために行動していた。
そのために、山本に『Xファイル』を探させた。
知ることができるのは山本だけだったからな。
山本は『Close-Up』としての役割を果たし、世界を観察した。
そして、『二次元』から『三次元』へ、存在する世界を変えたことで、人の在り方、社会の在り方、世界の在り方、それらを見つめ直した。
小さな視野からの観点ではなく、時間と経験からの観点でな。
それは社会に溶け込み存在を共有し合う人間では見ることのできない。
社会に個別した存在。
世界を第3者の観点から見ることのできる者だからこそ、人類を仮想世界から現実世界へ戻る判断ができる」


俺達は足を止めた。
扉には『0205』と書かれている。
部屋番号だろう。


「ようするに、人類が現実世界での生活に耐えられるかを判断するってことだ。現実世界はこの世界のように『能力』なんて、便利な機能は一切ない。
真実で固められた『『Concrete』の世界』だからな」


そう言うと、俺は『0205』室のインターホンを押した。