「あの人には『瞬間記憶』能力と優れた頭脳、それに『できない事』にしか興味を持たない性格。
それらを持ち合わせたから、できた技術だ。
問題は、あの人の持つ『瞬間記憶』能力だ。
あの人は、研究データ―を全て『自分の脳』に保存していた」

「それって『キャンセラー』の製造方法も含めて」

「ああ。
『エレクトロニクス社』に納品された『キャンセラー』製造機の設計図も含めてだ。
神山博士は『キャンセラー』製造機を自分の手で作り、納品した。
そして、『エレクトロニクス社』には、使用方法と『超粒子磁石』の材料しか教えていない」

「そこまでする理由って………」

「『子供の遊び』だ」

「それって………」

「『問題と答えは用意した。解いてみろ』という意味だ」


俺が答えると、アイドは笑った。


「ふざけた人だね。
問題と答えがあるんだから解けるに決まっているじゃないか」

「ああ。ふざけた人だ。
だが、その問題を『エレクトロニクス社』は解けなかった」

「でも、『ドライブシステム』は『W』内に存在する。
あれと神山博士の作った技術とは無関係ってことなの。
それとも、生前に作られた物を使っているだけなの」


俺はアイドの目を見つめた。
アイドは知っているだろう。


「お前ら、神山博士を殺したろ」


俺は唐突に尋ねた。
アイドは俺から目を逸らした。


「捕まえた多才能力者から聞いた話だと、ミコトを暗殺する命令があったと聞いたが、本当か」

「………あったよ」


アイドの表情は暗くなった。


「その時の状況を話せ」