―――現在
「『天才』か。
君が言うんだから、本物らしいね」


アイドは笑みを浮かべながら言った。


「別に、俺はあの人の事を『天才』とは思っていない。
『変わり者』だと考えている」

「それじゃあ、誰が『天才』だと言ってたの」

「『エレクトロニクス社』の山本社長だ」


『エレクトロニクス社』は山本の父親が経営している会社だ。
『キャンセラー』の製造に携わり、『Cの世界』が『ヘブン』国内で推進されてからは、現在の社名に改名した。
そして、山本の親父さんが社長に就任。
その後、『ドライブシステム』の設計・開発を行っていた。


「俺は神山博士に会ったことがあるが、当時は理解できない人物だと感じていた。
だが、年を重ねるごとに、その思考が理解できるようになってきた」

「そう。それでどんな人だったの」

「あの人は『できない事』にしか興味を持たない人だ」

「『できない事』………」


井上博士の息子と『超越者』を作る中で、当時の技術ではできないと判断した神山博士はどうすれば作れるのだろうと考えたのだろう。
そして、『物』に能力を与えることで、『超越者』を作れると判断した。
『超越者』の研究を止め、『ドライブシステム』の研究をする中で、森下と出会い、『キャンセラー』を作る代わりに資金が欲しいと言ったと考えられる。
予定通り、『ドライブシステム』を作ったが、その頃には『超越者』に興味を無くしていた。
なぜなら、『ドライブシステム』を作ったことで『できる事』になったためだ。そして、『キャンセラー』に研究を移行した。


「ああ。
『ドライブシステム』に関しても、『超越者』に関してもそうだが、あれらを生み出せたのは、その考えがあったからだろう。
俺は『ドライブシステム』の理論の一部を神山博士に聞き、『Cの世界』宣言後、『エレクトロニクス社』に『ドライブシステム』の開発を依頼した。
だが、技術者からは無理だと言われた」

「どうして」


アイドは不思議そうな顔をした。