―――夜
神山博士は不機嫌そうな表情を浮かべながら、『ドライブシステム』を操作していた。
俺は神山博士の横に付いて、『超越者』研究が行われるのを待った。


「神山博士。
『超越者』はどれぐらいで完成しますか」


俺は神山博士に尋ねた。


「うん」


神山博士は返事を返すだけで答えようとしない。



「先生。
そろそろ、帰らせていただけます」

「その方がいい。夜も遅いし」


神山博士は笑みを浮かべた。
俺は仕方なく、帰ることにした。


「一週間後、また伺わせて頂きます」


俺は研究室を出る前に、神山博士にお辞儀した。


「宜しくお願いします」

「うん。任せといて」


俺が顔を上げると、神山博士はやる気なさそうに手を振った。
『任せてくれ』と言いたいのか、『早く帰れ』と言いたいのか、この時は分からなかった。




―――4日後
俺は喫茶店で相棒を待っていた。コーヒーを飲みながら、今後の事を考えた。
『超越者』が誕生するのは決定事項となった。
金本から頼まれた『超越者』『勇者』『W』がこの世界に揃うのも時間の問題だ。

だが、揃ったところでどうなる。
『超越者』が誕生して、俺は制御できるのか。
『勇者』が現れたとして、俺は見つけることができるのか。
『W』が今までのように活動して、世界に認められる日は来るのか。
そして、俺には何が出来るのか。


「ウルフ。久しぶりだな」


俺が声のした方を見ると、相棒がいた。


「ああ」


俺は書類を片付けた。
相棒は向かい合うように座った。


「お客様。ご注文は」


店員が注文を伺いに来た。


「コーヒーだ」

「かしこまりました」


店員は厨房へ戻った。


「それで話したいことってなんだ」


俺は金本と神山博士のことを話した。