―――神山家別荘研究室
俺は10億を持って神山家別荘に戻った。
車を借りたため、ガソリンを補給してスズミに返した。

金を持って神山博士の研究室に入った。
俺は真っ先にソファーのある場所を見たが、神山博士はいない。
すると、チョークの音が辺りに響いた。
俺は音のする方を見ると、辺り一面に接地された黒板は白いチョークで埋め尽くされていた。


「はっ………」


俺はその光景を茫然と眺めた。
神山博士は俺に気づいていない様子だ。
懸命にチョークで何かを書いていた。

仕方なく、俺は残りのお金を研究室まで持って行った。
俺が10億を運んだ頃には、神山博士は書くのを止め、黒板を眺めていた。


「先生………」


俺は神山博士に尋ねた。


「んっ………柴田さん。
戻ってきたんだね」


「はい。前金10億円。
キッチリ用意しました」


俺は神山博士に報告したが、金に興味がない様子だ。
ずっと黒板に書いた謙さん式と図を眺めていた。


「神山博士………これは」


俺は神山博士に聞いた。


「ちょっと『キャンセラー』の考え方を変えたんだ。
君と話した後、電気の特性を調べたら『超電導電磁石』という物質があることに気づいたんだ。
これは『通常の電磁石よりも強力な電磁石』なんだけどね。
『超粒子磁石』なんて物が作れれば、小型化できるかもしれない」


「はぁ………小型化ですか」


「『超粒子磁石』を(+)として、空気中の(―)粒子を装備者の身体から、磁石へ向ける。
そうすることで、体内に(―)粒子が近づかない。
集めた粒子は『無』変換して放出する」