「人体への影響は………」

「大丈夫さ。
強化された(―)粒子で(+)と結合するだけだから無害さ」

「本当に大丈夫なんですよね」

「大丈夫さ。僕を信じれば」


俺は神山博士を見ながら考えた。
『貴方だから信じられない』とは言えない。


「『無』空間内と強制粒子(―)が『キャンセラー』ですか。
だから、装置の中に手を入れたわけですね。
私は電気特性の『電位』を応用したものだと考えていした」

「『電位』か~」

「はい。
『電位の高いところから、電位の低いところに向かって流れる』特性です。
その特性を応用して外部にGNDのようなものを接地させて粒子を外に放出していると………」


<GND(接地)>
電流を大地に流すこと
電気回路では基準電位点を示すこともある。


「それも考えたが、粒子蓄積場所が変わるだけだ。
つまり、保管場所を移動させただけでは、能力は無効にはならないよ」


神山博士は深く考えながら、答えた。


「確かに粒子は電気特性に似ている。
それは『脳信号』を使っているかね。
その回線を切断すればいいって考えもあるんだけど、それだと神経細胞の電流まで遮断しかねない。
つまり、筋肉への情報伝達が行えない状態となる」

「………そうですね」


俺は下を向いた。


「さてと。僕の研究は見せた。
もう疑いはないでしょ。
後は前金10億を払ってもらえれば、こっちも納得して研究に入るけど。
どうする」


俺は神山博士を見た。


「是非、仕事を依頼させてもらいます」

「こちらこそ、よろしく」


ソファーに横たわりながら、神山博士は返事を返した。