「はぁ………
スズミさんとは籍を入れているんですか」

「ん~………わからない。
スズミさんは入れているって言うけど」


俺はスズミを見た。


「あら~。
籍は入れているって言ったじゃないですか」

「そうだっけ。
まぁ、そういうことらしい」

「はっ………」

「スズミさんとは、幼馴染でね。
僕が研究している時も世話をしてくれた。
僕は不思議に思っててね。
それで、『どうして、僕の面倒を見てくれるの』って聞いたら、『結婚しているから』って言ってね。
まぁ、これも何かの縁だ」

「………本当ですか」


俺はスズミに聞いた。


「ええ。
ユキヒロさん、研究に夢中だったから、『サインして』って話したら、サインしてくれて………」

「いや~、あれだよ。
請求書とかと間違えてね。
いつもスズミさんに任せているから、まさか婚姻届だったとは思いもしなかった」

「はぁ………どうして、神山博士と………」

「ユキヒロさんといると楽しいから」


スズミは照れくさそうに笑みを浮かべた。


「買い物から帰ったら自宅は消失しているし、変な研究はしているし、物騒な人達と関わりがあるし………
でも、すべて『冗談』で物事を片付けようとする。
出会って、50年近くになるけどユキヒロさんってよく分からない人なの」

「はぁ………」


俺は神山博士を見た。
この人は………


「んっ………どうしたの。
なにか、僕の顔に付いてるの」

「いえ」


そう言うと、俺は残っているサンドイッチを食べた。