「そう。
では、なぜ人間がそのような変換ができて、他種類の生物が能力を持たないのか。
それは『進化』と人間の『血』だ。
人間は『進化』する中で、能力が必要だと判断したと考えられる。
理由は解明されていない。
そのため、外の粒子(―)側の粒子を体内に吸収して、(―)から(+)に変換する。
その変換箇所が『血』だ。
『血』の中で変換された粒子は(+)となり、人それぞれの粒子蓄積場所に向かう。
この粒子蓄積場所は『脳信号』から送られるため、人間では制御できない」

「………」


俺はただ聴いていた。


「多才能力者はこの『脳信号』を制御させることで、体内の(+)を制御する。
つまり、粒子蓄積場所と(+)(―)の割合をコントロールすることができるわけだ。
このことを研究者達の間では『リミッタ』と言われている。
だが、問題が一つある。
それは能力値が低いということだ。
僕の父親は『実験番号:NO.1』を担当していたけど、能力値25という低さに唖然としてね。
他の多才能力者もその程度しかない。
なぜ、なのか。
僕の考えでは、脳信号を無理やり制御させるため、負荷が大きいと考えられる。
つまり、指定した場所には向かうが、その間に別の場所に向かうためだ。
まぁ、散らばりながら、目的地に向かう。
そう思っていい」

「はぁ………」


俺が答えると、神山博士は笑みを浮かべた。


「柴田さんからの依頼、『超越者』も同じようなものだ。
『選択の石』の一部を変換さえ、人間の遺伝子と混合させることで、誕生させることが出来る。
『選択の石』から誕生したということは体内で(―)粒子を精製する。
つまり、『空間系』か『具現化系』になるはずなんだが………
それが出来なかったため、失敗となった」

「どういうことですか」


俺は神山博士に聞いた。


「どうやって『選択の石』と『人間の遺伝子』から人間を作るんだ」

「確かにな」