「僕達は、『多才能力者』の研究ではなく、『超越者』の研究だ。
別に法律に禁じられてないけど、あまり好きじゃなかった」

「人体実験という命の重さを感じたからですか」

「そんなところかな。
僕の父親が『多才能力者』の研究をしていてね。
『多才能力者』のことはよく知っている」


俺は初めて『多才能力者』を知った時のことを頭に浮かべた。
世界に発表される日に逃げられ、その後は行方を晦ましている。
その後、『多才能力者』の研究は禁止された。
多分、『G』が影で動いていたのだろう。


「僕の父親はね。
『多才能力者』に殺されたんだ。
くだらない話だろ。
自分が作った人間に殺されるなんて。
ああ、これ世間では公開されてないけど」

「………そうですか」


俺は動揺した。
そんな話は聞いたことがない。


「『超越者』研究で限界を感じた時にね。
僕はあることに気づいた。
それからは、別の研究に力を入れることにしたんだ」

「別の研究………ですか」

「『多才能力者』。
それは人類の進化した存在だと思う。
でも、彼らが父を殺したということは、彼らは自分達を生みだされた事に嫌悪感を持っている。
そもそも、多才能力は人類に必要なのかな。
人よりも才能を多く使えるってことはそれだけ、『無能者』になりやすいと考えられる」

「『超越者』はどうなんですか」


俺は神山博士に聞いた。


「『超越者』も同じさ。
ただし、『能力は一つ』だ。
能力者になりやすいと考えていた。
でも、産まれた子は、何を思って生きることになるんだろう。
能力値100以上。誕生したら、世界は変わるだろう。
良い方にも、悪い方にも。
要するに、『超越者』として産まれた子は世界を『選択』できるってことだ」