握手した後、俺は神山博士に尋ねた。


「神山博士が『超越者』を作れる理由は何ですか」


神山博士は足を組み、背筋を伸ばした。


「柴田さんの知っている井上博士とは友人でね。
彼、父親の研究を引き継ぐって話してて。
一緒に研究していたこともあったよ」

「研究ですか………」

「そのときに、『超越者』研究も携わったんだ」

「携わった………
でも、井上博士が失敗したってことは………」

「そう。
研究者にとって資金は命に等しい。
まぁ、研究資金がなくなり、井上博士は研究を中断して、本業の『クローン技術』に力を注ぐようになったけど。
僕自身はそうなる前に止めたけどね
まさか、再び『超越者』研究をすることになるなんて」


「どうして止めたんですか」


俺は神山博士に聞いた。


「研究はね、結果を予測して取り組まないといけない。
僕は『超越者』研究に携わり、このまま続けても意味がない。
そう感じたんだ。
だから、止めた。
簡単な話が、当時の技術では作れなかった。
そう言う意味だよ」

「そうですか」

「柴田さんも知っているだろ。
多才能力者の研究は法律で禁止されていることを」

「はい」


俺は答えた。




<多才能力者>
人は一つの能力しか扱うことができないとされていた。
しかし、近年の研究で多才能力の研究により、この常識を打ち消すことが出来た。
現在では多才能力者の研究は禁止されていた。
これは世界共通の法律によるものだ。

『命を大切にすること』

多才能力の研究には犠牲がある。
それはまだ知識もない子供・産まれていない子供にも適用されることであった。
研究所の閉鎖や情報の規制が行われ、世界の多才能力者は8人とされているが、
誰が多才能力者なのか…
どこに多才能力者がいるのか…
多才能力者が何をしているのか…
等の情報は研究者の一部の者しか知られていない。