「そこでだ。君には『超越者』を作る手助けをしてもらう」

「待て………
俺は技術者じゃない」

「大丈夫だ。
『彼』に『井上博士の知り合い』と言い、『超越者』のことを話せばいい。
きっと、伝わるはずだ」

「誰なんだ。『彼』って………」

「行けば分かる」


金本は答えたくないようだ。


「わかった。場所は………」

「場所は―――」


俺は金本から場所を聞いた。
俺は地図に印を付けた。


「山奥か………こんなところに人がいるのか」

「いる。だが、気を付けろ。
『彼』には『超越者』の事だけを話せ」


金本は鋭い眼差しで俺を見た。


「『彼』はこの仮想世界において、危険な男だ」

「『超越者』よりもか………」


俺が金本に聞いた。金本は頷いた。


「私は『才能』と『勉学』のバランスを均等にしたい。だが、彼は『粒子』の世界を作ろうとしている」

「『粒子』………
なんだ、それは」

「………だが、『超越者』を作れるのも『彼』しかいない」


金本は自転車に乗った。


「『超越者』『勇者』『W』を君に任せる」

「俺の約束は覚えているよな」

「『死』を望んでいるんだろ。容易いことだ。
君が『超越者』を作ればね」


金本は自転車を漕いだ。


「結局、貴方は何者なんだ」


俺は離れて行く金本に言った。
金本は答えず、自転車を漕ぎ続けた。


「そうか。
次、会った時に教えてくれ」


俺は金本の姿が見えなくなるまで、彼の背中を見つめた。